我が国の人口問題で意外に知られていないのが独身者数、いわゆるソロ人口の増加だ。高齢化や人口減に比べると世間の関心は薄いが、独身者の増加によって、家族単位で設計されてきたこれまでのモノづくりやマーケティングが大きく変化する。
総人口に対する独身者率は、1980年では34%だったが2015年には41%まで上昇し2040年には47%に達すると、国立社会保障・人口問題研究所は予測する。人口の約半分が独身の国になる日本で、モノづくりはどのように変化していくのだろうか。
東京・秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaの生活家電売り場。炊飯器コーナーでは、独身(ソロ)世帯向けの3合炊きタイプがずらりと並ぶ。従来の炊飯器といえば、4人家族を想定した5.5合炊きが主流だったが、ここにきて1~2人向けの3合炊きタイプの商品が増えてきたためだ。
世界中からセレクトしたキッチン雑貨専門店「212 KITCHEN STORE(トゥーワントゥーキッチンストア)」が若い女性で賑わっている。
大きな特徴の一つは、ソロ向けの食器やキッチングッズ、キッチン家電の豊富な品揃え。キッチン家電だけでも、小型の電気鍋、ホットサンドメーカー、ヨーグルトチーズメーカー、ミニボトルブレンダー、低温調理器、ハンドミキサーなど幅広く揃えている。
シャープもソロ家電に本腰
大手家電メーカーも独身(ソロ)家電の開発に本腰を入れ始めた。2019年11月、シャープは容量1ℓで、1〜2人分の調理ができるソロ向けのヘルシオ ホットクックを発売した。
従来まで家電メーカーは、夫婦と子供2人という家族構成を「標準世帯」と捉え、家電の製品開発を行ってきたが、それが実勢に合わなくなってきている。
新モデルの開発でシャープは従来のモノづくりの考え方を大幅に見直した。モノづくりの根幹となる世帯の考え方を、夫婦と子供2人という標準的な家族世帯から「独身世帯」にも舵を切ったのだ。
国内では独身世帯が増加しており、今後さらに増えていく見通しだ。家電業界でも機器のコンパクト化を図り、独身世帯の増加に対応する商品戦略が活発化しそうだ。