これまで6月〜8月の夏季に需要が集中する傾向が強かったエアコン市場だが、過去2年間は5月の販売が8月を上回っている。GfKジャパンのデータで明らかになった。
特に今年は歴史上もっとも暑い夏だったにも関わらず、8月の実需は5月を下回った。JEMA(日本電機工業会)の過去4年間のデータでも5月の出荷が8月を上回っている。
一方、年間出荷台数では20年の9,870万台をピークに21年、22年と減少を続けており、今年も現状のペースで推移すれば、3年連続で減少する見通しだ。エアコン市場に異変が起きているのか。その要因をさまざまなデータから探ってみる。
今年1〜8月のエアコン販売振るわず
GfKジャパンのデータによると、今年、昨年とここ2年は5月の販売が8月を上回っており、5~7月の販売比重が年々高まっていることが分かる。
特に今年のエアコン商戦はスタートが早かった。4月20日、本州では今年初めて30度以上の夏日となり、4月下旬から夏日になる地点も多く全国的に高温が続いた。
予想外の暑さを追い風に「エアコンクリーニング」や「エアコン試運転」など、エアコンの早期販売に向けた動きが活発化したのもこの時期だ。
実際、4月の販売は平年(過去10年の平均値)を上回った。国や工業会から早めの試運転を推奨されたことや、5月でも真夏日が増えてきたことにより、春先からエアコン購入に動く層が増えたと考えられる。
夏商戦は猛暑に見舞われた。気象庁によると、7〜8月に35度以上の猛暑日を記録した地点は昨年の2倍になった。6〜8月の平均気温は統計を取り始めた1898年以降で最も高くなった。
当然、エアコン販売でも強力な追い風となり7〜8月は前年比24%増。7月は数量前年比28%増、8月は同18%増と前年を上回った。
コロナ禍では「換気」機能が実需を押し上げた
しかし、昨年夏の同時期の販売が低調だったこともあり、各月とも平年の販売には及ばず、上半期の落ち込みをカバーするには至らなかった。
その結果、今年1〜8月における累計販売台数は、過去10年の平均比で13%減、前年比8%減(GfKジャパン)とエアコン販売は振るわなかった。
昨年は新型コロナに伴う中国のロックダウンの影響で、極端な品不足に陥ったが、それに比べると現在は在庫に余裕がある。現状はむしろ、エアコンの供給過多の懸念が高まっているほどだ。
出荷ベースでも5月が8月を上回る
GfKジャパンは今夏のエアコン商戦が平年に及ばなかった理由についてこう分析する。
・18年~20年にかけて起こった猛暑、消費増税前の駆け込み需要、コロナ禍の特別定額給付金など、エアコン市場においてはここ数年追い風となる事象が続いた。
・これによって家庭用エアコンの買い替えが進み、ある程度一巡した状態にあると推測。また、昨年は4~6月の高気温で春先の販売が好調に推移した。これらの反動が今年のエアコン市場には起きている。
加えて、「電気代の高騰や製品の価格上昇などで消費マインドが冷え込んでいる」(神奈川県の有力地域店)という指摘もある。
出荷ベースでも同様の傾向
出荷ベースでも実需と同じ傾向が出でいる。JEMAの過去4年間のデータをみると、5月の出荷が8月を上回っているからだ。
具体的に言うと、5月は20年が94.7万台、21年101.7万台、22年80.4万台、84.9万台、23年84.9万台。一方の8月は20年が94.0万台、21年63.5万台、22年76.9万台、23年72.1万台と、各年とも8月より5月のほうが出荷台数は多い。
ちなみに、JEMAによると8月の白物家電の国内出荷額が前年同月比6.2%減の1,972億円と、2カ月連続で前年同月を下回った。
エアコンの出荷金額が4.1%減の618億円、台数が6.2%減の72.1万台。出荷台数は8月単月の過去10年の平均76.7万台を下回った。
これまでエアコン商戦といえば、7月、6月、8月の順で販売台数が多く夏季がヤマ場だったが、各月の販売状況や出荷状況を見ると、5月を含め長期的な早期購入の傾向が顕著になっている。
冬のエアコン商戦も春・夏商戦同様、販促活動の前倒しと丁寧な点検・メンテナンス活動がますます重要な取り組みになりそうだ。