地域店生き残りの選択肢を広げようと、Dj-net(全日本でんき屋ネットワーク協同組合、川上浩央理事長)が6月2日、東京都内で東日本地区を対象とした勉強会を開催した。参加者は取引先企業なども含めて58人に上った。スベシャルゲストとして招いたのはコスモスベリーズとアトム電器チェーンの経営トップ、エディオンのFC事業の責任者である。この説明会開催にはどのような背景があるのか。
3社の事業を詳しく聞きたい
宮崎県電機商業組合延岡支部がコスモスベリーズとアトム電器チェーンのトップを招いて講演会を開催したのは、地デジバブル真っただ中の2011年4月21日のことだ。
それから12年後、両者のトップは交代したが、再びコスモスベリーズの牧野達社長、アトム電器チェーンの井坂博史社長に加え、エディオンの阪本太郎FC開発部長ら3社の事業トップが揃い踏みした。
家電FC/VC3社のトップが一堂に会し、組合店にプレゼンしたのは初めてのことだろう。メーカー系列店を中心に構成されている地域店業界では快挙といえる出来事かもしれない。
今回の3社の合同説明会を企画したDj-netの川上理事長はこう話す。
「加盟されているお店、未加盟のお店も3社の事業には関心があります。では、実際にどのような活動を展開しているのか。取引内容や取引条件などを詳しく知らない組合員さんもいると考え企画しました。3社の事業内容を3社のトップから直に聞ける機会は非常に少ないと思います」。
合同説明会では熱心に耳をかたむける組合店の姿が印象的だったが、組合店が3社に熱い視線を送るのには理由がある。
その一つに減少の一途をたどる地域店自身の危機感がある。地域店数のピークは1982年の7万1,283店(通産省商業統計)。
商業統計調査は廃止されているので、地域店数は全電商連(全国電機商業組合連合会)が集計した組合店数を参考にしよう。2022年11月現在は1万2,501店、現状では推定1万2,200店といわれており、地域店数が大きく後退していることが分かる。
これまで系列店を支えてきた大手家電メーカーが海外メーカーに買収されたり傘下入りしたり、家電事業を縮小するところも出てくるなど、系列店を支える力が脆弱化している点が地域店衰退の一因となっている。
「メーカー販社の立場からすると、家電製品をあまり売っていない店が増え、ボーダーラインである月55万円仕入れてくれる店も減っている。これでは販社の運営が維持できず、その結果、自系列店の面倒が見られなくなっている。今後も系列店へのサポートが先細っていくのは避けられない」(メーカー販社の営業マン)。
もちろん、家電量販店が巨大なチャネルとして伸長し、家電のネット通販も猛烈な勢いで広がっていることも地域店減少に拍車をかけている。消費者ニーズの多様化が進み系列メーカーの品揃えでは対応が難しくなっているからだ。
「販促力」と「情報力」に注目集まる
一方、コスモスベリーズなど3社には既存のメーカー販社にはない「販促」と「情報」という強い武器を持っている。そこが地域店の注目ポイントになっている。
販促で言えば、大手家電メーカーや海外、国内中堅メーカーの定番商品はもちろん、売れ筋や新製品などを網羅した商品カタログやチラシ、リフォーム商材などの販促ツールの幅広い品揃えである。
優れたマーケティング力
情報では、例えば市場価格を反映した「仕入れ価格情報」の提供など、市場価格に対しスピーディーに卸価格に反映する取り組みが注目されている。
マーケティング機能でいえば既存のメーカー販社より、3大家電FC/VCの方が優れているといってもいいだろう。
地域店にとって家電FV/VCの持つ情報機能は重要である。家電市場では現在、どのメーカーのどの商品がよく売れているのか。新製品や話題となっている商品にはどのようなものがあるのか。情報のプラットフォームとして家電FC/VCを位置付けている加盟店も少なくないようだ。
地域店は一つのメーカーだけでは多様化する消費者ニーズに対応できないが、混売にすると手間とコストがかかる。信頼できるFC/VCチェーンとタッグを組んで効率店に店舗を運営しようと考えている店が増えている。
経産大臣の認可を受けた事業組合
Dj-net(全日本でんき屋ネットワーク協同組合、事務局・東京)の設立は2001年8月30日、経済産業大臣の認可を受けた事業組合として発足した。
▲昨年11月に開催された通常総会の模様
全国規模で唯一の家電事業の共同組合であり、組織運営はインターネットを活用し、組合員の連絡などの業務はメールやML(メーリングリスト)で行っている。情報共有のスピードはもちろん、情報伝達コストを最大限抑えているのが特徴だ。
組合員数は186店(2021年9月末現在)。現場の組合員の声を大切にしており、現在の主力事業である「延長保証制度」や「共同購買」、「家電修理情報検索システム」などは組合店の声から誕生したもの。
一方、組合員自身が講師となり、経営や販促、修理・メンテなど、組合員に役立つ情報を惜しげもなく披露する「勉強会」が組合員の中でも高く評価されている。
なお、6月16日には「西日本勉強会」として、今回と同様の勉強会を岡山国際交流センターで開催した。