2009年、アナログレコードの生産枚数は10万2,000枚とCDによって大きく落ち込んだ。このままレコード市場は衰退していくと思われたが、2010年以降持ち直し2021年には約190万枚を生産した。
現在はCDに替わってネットから好きな音楽を手軽に入手できる時代だが、レコード人気は衰えていない。レコードブームは既存の「オーディオ専門店」復活を遂げた。
日本レコード協会によると、アナログレコードの生産枚数は2009年の10万2,000枚を底に市場は上向き始めた。その後じわじわと伸び2012年には約45万枚、2021年には約190万枚と、ドン底の2009年と比べると18倍以上の規模に復活した。
中古レコードの存在もレコード復活に欠かせない要因になっている。そのきっかけが2012年11月、世界的に発売されたビートルズのアナログバージョンのリリースだ。予想外の大ヒットとなってレコードの存在感を高め、オリジナルの中古レコードのブームを世界中に広げた。
オーディオショップを復活
ネットでも中古レコードの販売は広がり、欧米ではアマゾンやイーベイなどの大手通販が中古レコードを販売。世界で最も有名なレコードのオンライン売買サイト「ディスコグス」では5億枚以上のレコードやCDをアップ。中でも中古レコードの売買が盛んだという。
日本でも中古レコードの中小店がオンラインショップを開設したり、大手の「楽天市場」や「アマゾンジャパン」が中古レコードの販売に注力するなど、中古レコード市場はリアル、オンラインとも年を追うごとに伸びている。
レコード市場の活況を受け、近年ではあえてCDではなくレコードでしか新譜をリリースしない新人やベテランの人気アーティストが増えていることもレコード復活の要因になっている。
こうしたレコードブームに目を付けてアナログオーディオを復活させた店がある。島根県松江市に店を構えるのオーディオ&ビジュアルショップ フクダ(島根県松江市、岡英司店長)である。
きっかけとなったのは6年前、山陰地区の大型商業施設で開催されたイベント「アナログレコード即売会」の出展である。即売会にやって来たレコードファンに、岡氏はアナログオーディオの楽しさ、素晴らしさを懇切丁寧にアドバイスした。
そのアドバイスがレコードファンのハートをつかみ、イベント終了後は「フクダ」店舗に足しげく通うようになる。「これは行ける」と考えた岡氏はアナログレコードをメインとしたイベントを次々と企画し、オーディオ機器の販売に結び付けた。
毎年12月に開催する「ダイナマイトセール」では、アナログプレーヤーの特設コーナーを開設し、J-POPやジャズ、ロック、歌謡曲などの中古レコードを販売。毎年2月と8月には中古CDとアナログレコードの即売会を実施。中古レコードは専門業者と提携し2,000枚を揃える。
アナログレコードはイベント時だけでなく店舗でも常時300枚ほど揃え、月に1度シャッフルして提供しているほど力を注いでいる。
「ターゲットは40代〜50代のアナログオーディオの体験があるユーザー。お陰さまでアナログレコードを聴いてもらうことによって、休眠客や新規客が店に来てくれるようになり、若い世代のお客も増えている」(岡氏)。レコードブームに乗り、同店の年商も約8,000万円にアップした。