業界トレンド

飽和市場にあえて参入、象印の皮算用

9月1日に発売した象印のオーブンレンジ「エブリノ」が順調な滑り出しを見せている。

調理家電分野を中心に数々のヒット商品を誕生させている象印だが、電子レンジ事業は再参入となる。普及率90%以上、飽和期の電子レンジ市場にあえて再チャレンジする理由は何か、勝算はあるのだろうか。

新製品開発にあたり、消費者調査はもちろん、同業他社の製品を徹底的に研究、分析した。その結果、電子レンジの使い方で分かったのは「温め」が中心で、多くのユーザーは機能を使いこなせていないということだ。

同社社長執行役員の市川典男氏も電子レンジ再参入に際してこう話している。「オーブンレンジの使用実態を見ると、多くのユーザーが機能を使いこなしていない。飽和市場とはいえここに大きなチャンスがある」。

市川社長

使いこなしてもらえる3つの機能

象印は炊飯ジャーなど調理家電で培った独自の調理ノウハウを「エブリノ」に搭載した新発想の機能が3点ある。それはユーザーに使いこなしてもらえる3つの機能として位置付けた。

 1つはレンジ加熱とグリル調理を組み合わせた「芯までレジグリ」機能だ。レンジとグリルの自動切り換えで素早く調理ができる。例えばハンバーグならまずレンジ機能で中まで素早く熱を通し、その後は自動でグリル機能に切り換え、食材の表面にこんがり焼き目を付ける。

従来のグリル調理のみでは20分ほど時間のかかる4人分のハンバーグやグラタンは、「芯までレジグリ」機能を使うことによって約13分で調理できる。焼き色も弱、中、強の3段階で調節可能だ。

浮かせて調理するという新発想

 

2つ目は食材を浮かせて温める「全方位あたため“うきレジ”」機能の搭載だ。

食材を浮かせることによってマイクロ波が庫内に広がりやすくなり、全方位から加熱できるというレンジではこれまでにない新しい発想の機能だ。

エブリノにはガラス製のボウルが付属されている。角皿を上段に設置し、角皿下部のレールにボウルを取り付けることで、ボウル底が庫内底部から約1cm浮いた状態になる。

一般的なレンジ調理ではボウルがレンジに接地していると、接地部にばかりマイクロ波が伝わってしまうので温度ムラが発生する。ボウルを浮かせることで、マイクロ波が庫内全体に伝わりムラなく調理ができるというわけだ。

3つ目は、ボタン1つで揚げ物の温め直しが時短でできる「揚げ物 サクレジ」機能だ。レンジ加熱で中を温め、グリル加熱で衣をサクサクに焼き上げるという機能で、買ってきた惣菜の揚げ物も短時間で揚げたてのようなおいしさに仕上げる。とんかつや鶏天、フライドポテト、カレーパンなどの温め直しに最適かもしれない。

競争の激しい市場にあえて参入

        

デザインにもこだわる

ベンチマークはバルミューダ ザ・レンジ

デザインにもこだわった。ベンチマークとして的を絞ったのは新興家電メーカーのバルミューダの「バルミューダ ザ・レンジ」だろう。

両者ともキッチンやインテリアに馴染むシンプルで落ち着いた感じで左右2つのダブルダイヤル方式を採用。想定している主要ターゲットもシニア層とは一線を画した30代〜40代のミレニアル世代だ。

価格帯もパナソニックや日立、シャープ、東芝など強豪メーカーがひしめく8万円以上の高級価格帯は避けて、バルミューダと同じクラスの5〜8万円の中価格帯クラスに設定したことからも伺える。

バルミューダとの差別化ポイントは、バルミューダにはない「グリル機能」と新発想の多彩な調理機能である。

新ブランド「エブリノ(EVERINO)」は、Everyday、Everyone、Every dishの3つの言葉が含まれており、「まいにちの、みんなの、とことん使えるオーブンレンジ」という思いが込められている。

「オーブンレンジを使い倒してもらいたい」。飽和市場にあえて参入し、新たな市場を開拓しようとする象印の「決意」も込められているようだ。

八巻 潔

八巻 潔

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株式会社ブレインズ代表
1979年「電波新聞社」に入社。
1996年家電・IT関連の出版社「リック」に入社。
「技術営業」「IT&家電ビジネス」編集長を経てリック専務取締役。
「ヤマダ電機に負けない 弱者の戦い方」(2008年)「家電製品アドバイザー試験 早期完全マスター」(2001年~2013年)などを出版。
2014年家電業界のジャーナリスト&コンサルタントとして独立。
2016年株式会社ブレインズ設立。

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地域店ドットコム運営元

株式会社ブレインズ

ブレインズのコンサル

地域店 コンサルティング

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