「難聴を自覚していない」「価格が高い」「恰好が悪い」「調整や取り扱いが面倒」などの理由で、難聴自覚者に敬遠されがちだった補聴器。だが、ここに来て高齢者の増加、デザイン性の向上などで脚光を浴びつつある。
その補聴器市場にシャープが本格的に参入する。一般的な補聴器は両耳(2台)で約30万円(補聴器を調整するフィッティング込み)だが、同社は9万9,800円(同)という衝撃的な価格を打ち出した。
9月に発売したのは、ワイヤレスイヤホンスタイルの耳穴型補聴器「メディカルリスニングプラグ/MH-L1-B」(希望小売価格9万9,800円、非課税)。
一般の補聴器は店舗で購入した後、機器の価格にフィッティングなどの料金が含まれ平均価格は30万円程度となる。シャープはフィッティングサポートをオンラインにした上、保証サービスなどをオプションにすることで販売価格を3分の1程度に抑えた。
ユーザーは機器購入後、自宅から聴力チェックや初期設定、聞こえ具合の微調整などのフィッティングサポートをシャープのクラウドサービス「COCORO LISTENING」から受けられる。サポートするのは認定補聴器技能者や言語聴覚士の資格を持つ専門スタッフだ。
フィッティングサポートは、購入後から60日間は無料で何度でも受けられる。リモートでのフィッティングサポートのみを追加したい場合には、期間を60日間追加できるサービスプランも1万1,000円で提供する。
その他、補聴器としての使用にとどまらずワイヤレスイヤホンのように高音質で音楽鑑賞ができるのも魅力。特に、中高音域は繊細で澄みわたるように広がるのが特徴だ。スマートフォンとBluetoothで接続し、専用スマホアプリで音量調整などを操作する。
ターゲットは働き盛りのビジネスパーソン
本体にマイクを内蔵しているのでスマートフォンでのハンズフリー通話にも対応する。イヤホン機能では、会話などを聞き取りやすくする「リスニングモード」、スマホの動画音声や音楽などを楽しめる「ストリーミングモード」、本体内蔵のマイクを使ってスマホ通話やオンライン会議などができる「ハンズフリー通話」の3つの機能がある。
シャープが目指しているのは眼鏡や時計のように日常的に身につけたくなる補聴器だ。ビジネスシーンにもマッチする洗練されたデザインで、充電式の電池は最大約55時間持ち生活防水や防塵にも対応している。
主要ターゲットとしているのは、軽度難聴や中等度難聴の50代〜60代のビジネスパーソン。聴く力が健康な状態の期間、「健聴寿命」の延伸も訴求する。
補聴器の潜在需要は膨大である。シャープは難聴自覚者のうち補聴器の非所有者率は88%に及び1,134万人にのぼると試算する。