新型コロナ対策がトップ
「(加湿器は)従来ならインフルエンザの流行に比例しながら少しずつ伸びてきた商品。2020年度は一度もインフルエンザが流行しなかったが、新型コロナの影響で150%という大幅増になり、売り上げも利益も回復した」―。
7月28日の新モデル発表会(オンライン)で、ダイニチ工業社長の吉井久夫氏は、想定外の加湿器特需に驚きを隠さなかった。GfKジャパンによると、2020年度の加湿器の量販店販売数量は前年比155.3%と大幅に増加した。
加湿器の出荷は例年11~12月にピークを迎える。日本電機工業会(JEMA)の出荷実績データでは、2020年11月の加湿器出荷金額が前年同月比161.2%を記録した。
そうした中で、ダイニチ工業は業界水準を大きく上回る前年比約180%となり、11月の出荷金額としては2003年の販売開始以来、過去最高の実績をあげた。加湿器需要の拡大を受け、新潟工場では通常の約5倍の人員で加湿器を増産したという。
吉井氏の指摘通り、加湿器の購入理由は大きく変わった。ダイニチ工業の調べによると、2019年度の購入理由のトップは「乾燥でのどが痛む」(68%)。次いで「ウイルス・インフルエンザ対策」(57%)、「肌や目の乾燥が気になる」(48%)であった。
一方、2020年度のトップは「新型コロナウイルス対策」(63%)、次いで「乾燥でのどが痛む」(60%)、「インフルエンザ対策・肌や目の乾燥が気になる」(各50%)という順。新型コロナの威力の大きさが伺える。
事業所向けの大容量タイプも急増
販売金額の高い大容量タイプの売れ行きが好調だったというのも、実需金額を押し上げた要因。新型コロナ感染対策で、老人ホームや保育所、幼稚園、企業のオフィス需要だけでなく、小・中学校や高校などからの引き合いも急増したようだ。
ダイニチ工業では、加湿量1000mL/h以上のLXシリーズの構成比が増加し、出荷台数の前年比は3倍となったという。
問題は今後の加湿器需要の見通しである。吉井氏は2021年度の市場について、こう述べた。
「2021年度は前年度の伸びすぎた反動で落ち込むと予想。ただ、加湿器に対する関心度と認知度は高まっており、生活者にとって欠かせない商品になりつつある。そういったことから出荷金額では反動減といっても、前年度比10%減程度に収まるとみている」。