業界トレンド

メタバースビジネスに脚光

今回、リアル開催は3年ぶりとなった、国内最大規模のIT(情報技術)見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2022」(10月18日から21日の4日間開催)で脚光を浴びたのはメタバースだ。

そもそもSF用語でしかなかった「メタバース」という言葉がいつの間にか毎日のニュースで耳にするようになった。

メタは超越した、バースは宇宙と言う意味。米国の作家であるニール・スティーブンスンが小説にした「スノウクラッシュ」の作中に登場するインターネット上の仮想現実が語源である。

ネット上のサーバーに構築する3次元グラフィックの仮想空間(社会)で、利用者はアバター(化身)を操作することによって仮想空間内で現実空間(社会)と異なる生活を送ることができる。

メタバースビジネスは、主にこうした3次元の仮想空間を構築するインフラや機器、その空間を活用したサービスを指す。メタバースは次世代のインターネットになるといわれている。

12兆〜24兆円の経済効果を予測

 メタバースの市場規模はとらえ方により大きく異なる。三菱総合研究所の調べによると、市場規模の予測値は3つの規模感のもの(10兆ドル規模、1~2兆ドル、1兆ドル未満)が公表されているという。

米国の大手総合情報サービス会社のブルームバーグが2021年12月に公開した2024年には8,000億ドル規模になるとの予測、カナダのデジタル資産投資会社のGrayscaleが2021年11月に発表した2025年には4,000億ドル規模になるとの予測がある。

複数の市場調査会社では2024年~2026年頃までを予測したリポートを発表。直近では英国のCitiグループが2030年の潜在市場として8~13兆ドルと、大きな予測値(期待値)を公表しているという。

3次元の仮想空間を活用した新規のビジネス

 一方、日本国内では2035年までに医療や教育、娯楽などを中心に12兆~24兆円の経済効果を生むとの試算がある。日本企業では現在、仮想空間のプラットフォームをはじめ仮想現実(VR)や拡張現実(AR)機器、5Gネットワークなどといったさまざまな製品やサービスを提供している。

短時間でアバターを自動生成

シーテックで注目を浴びた1社が凸版印刷だ。同社のブースでは、企業向けショールームの構築サービス「ミラバースショールーム」や、バーチャルモールアプリ「メタパ」、3Dアバター自動生成サービス「メタクローンアバター」などのメタバース関連サービスを展示した。

「ミラバースショールーム」とは、同社独自の色再現技術や質感計測技術、

3DCG/VR技術などをベースに企業の製品や思い描く空間を魅力的にメタバース上で再現するサービスである。

同時にアバターを介することで、ユーザーに従来のカタログや動画と異なる新しい製品・サービス体験を提供する。時間や空間の制約にとらわれない全く新しい企業の販促・プロモーションを支援するという。

「メタパ」は仮想空間上に構築した複数の店舗をモールのように一つに集約したバーチャルモールアプリ。VRゴーグルやゲーミングPCなどの特別なデバイスは不要で、スマートフォンから手軽にメタバースを体験できる。

例えば、友人や家族とアバターでグループショッピングをしたり、3DCGで再現した商品をAR機能により実寸大サイズで確認したり、商品の特徴などもCGアニメーションで確認できる。

実店舗と比べて、ECサイトでは不足がちな双方向のコミュニケーションや買い物体験をバーチャル店舗で実現する。

「ミラクローンアバター」は、1枚の顔写真から短時間でフォトリアルな3Dアバターを自動生成できるサービス。同社のブースでは、顔の正面写真を撮影することで、頭部の形をAIが予測し、3Dアバターを生成するミラクローンを体験できる。

わずか20秒ほどでアバターを自動生成

撮影後20秒ほどでアバター完成

撮影後20秒ほどでアバターが生成されるほか、ブースではその後にQRコードが表示されて、自分のアバターの動画をダウンロードすることが可能だ。サービス自体はビジネス向けで、バーチャル空間における会議や展覧会などで、リアルなアバターを利用できる。

八巻 潔

八巻 潔

投稿者の記事一覧

株式会社ブレインズ代表
1979年「電波新聞社」に入社。
1996年家電・IT関連の出版社「リック」に入社。
「技術営業」「IT&家電ビジネス」編集長を経てリック専務取締役。
「ヤマダ電機に負けない 弱者の戦い方」(2008年)「家電製品アドバイザー試験 早期完全マスター」(2001年~2013年)などを出版。
2014年家電業界のジャーナリスト&コンサルタントとして独立。
2016年株式会社ブレインズ設立。

関連記事

  1. ニトリ、家電市場に本格参入
  2. 飽和市場にあえて参入、象印の皮算用
  3. Z世代とアナログレコード
  4. 地域店ビジネスと顧客を再定義
  5. 八巻ゼミ、石川県商組で開講
  6. ソロ家電の時代
  7. コロナ禍で人気の調理メニューとは
  8. 今年の花粉飛散量は増加予想、「空清」の提案は早めに

地域店ドットコム運営元

株式会社ブレインズ

ブレインズのコンサル

地域店 コンサルティング

おすすめ記事

前代未聞の合展&バスツアー

売上目標0円、合展ではなく勉強会に1月29日、全国津々浦々から地域家電店の精鋭80以上の店…

最近の投稿

PAGE TOP