GfKジャパンによると、2020年の家電小売市場規模は前年比2.9%増の7兆2,800億円となった。だが、家電量販企業の今期の予想は厳しい。ヤマダHD、ケーズHDともに売り上げ、利益ともに頭打ちの見通しだ。
ヤマダHDの売上予想は前期比3.8%減の1兆6,860億円、純利益は0.4%増の520億円。ケーズHDは同2.6%減の7,720億円、純利益は17.4%減の320億円としている。
両社とも既存店売り上げは減じるとみて、新規出店や取り扱い商品の拡大を図る。新規出店ではケーズは19店、ヤマダは30店ペースの出店を予定している。
確かに、今年の家電市場の見通しは厳しい。懸念材料として、①「特別定額給付金に代わるものがない」、②「巣ごもり需要とテレワーク需要の一巡」③「不確定要素の天候要因(猛暑)」などが挙げられる。
家電市場もワクチンの影響
特に、家電需要を大きく支えた巣ごもり需要の一巡が懸念されている。さらに、今年7月以降のワクチンの供給次第で流れは大きく変化するだろう。
ワクチンが出回れば、これまで抑えられていた消費が一気に動き出す要素をはらんでいる。ただ、それは家電にまわるわけではない。ショッピングやレジャー、旅行、グルメなど、これまでの巣ごもりを中心としたインドア需要から「アウトドア需要」へと広がる可能性が強い。
天候要因も今年の大きな懸念材料だ。昨年のエアコンなど季節商品の動きは猛暑や厳冬に支えられた。
日本電機工業会によると、2020年のエアコンの出荷台数は、年間1,000台に迫る986万9,000台(前年比0.6%増)と過去最高を記録。エアコンや洗濯機など白物家電の国内出荷額は前年比1.0%増の2兆5,363億円と、5年連続でプラスとなった。1996年以来、24年ぶりの高水準だ。
今年の商戦では昨年並みの猛暑や厳冬が到来するという保証はない。季節商品や生活家電の実需を伸ばすには、天候頼みというのが正直なところだろう。
とはいえ、GfKジャパンによると今年1月〜3月は前年同期比107.0%と好調に推移している。足元の4月も117.6%と絶好調だ。今年1年を展望すると、前半戦は「晴」、オリンピック後の後半戦は巣ごもり需要の反動減などで「曇り」となりそうだ。
家電販売界はいかに前半戦で貯金をためて、厳しくなる見通しの後半戦にのぞむか。オリンピック後は予断を許さない状況が続きそうだ。