2019年11月からFIT制度(住宅用固定買い取り制度)が満期を迎える家庭が増え、FIT卒業なので「卒FIT」という言葉が広がった。
卒FITの太陽光発電の利用法は大きく2つある。一つは蓄電池や電気自動車などと組み合わせて、自宅などの電力として使う「自家消費」、一つは余った電力を少しでも高い小売り電力事業者に買ってもらう「余剰電力の自由売買」という利用法だ。
現状では、蓄電池や電気自動車などと組み合わせて、余剰電力を売るのではなく蓄えて「自家消費」するユーザーが増えている。
累積出荷台数は42.5万台に
日本電機工業会(JEMA)によると、2018年度の蓄電池の出荷台数は7万台を超え、2019年度には上期だけで5万台を超えた。2018年度と比較して普及率は2倍近くにも上昇したという。2020年度上期では6万台を超え、前年同期比13%増で推移した。累計出荷台数は約42.5万台になった。
FIT制度の満期が近づくユーザーが増えるにつれて、普及率が急速に伸びてその後も順調に動いている。
卒FITを迎えた太陽光発電の数は2019年の11月〜12月だけでも約53万件にのぼった。資源エネルギー庁によると、累積では2019年内に53万件、2023年までに約165万件の住宅で「卒FIT」を迎える。蓄電池の大きな見込みユーザーとなる。
蓄電池は生活者にとって必要不可欠な商品ではない。地震や台風、豪雨など自然災害時の停電に備える「安心・安全」を担保してくれる商品だ。
最近の蓄電池ニーズは「電気料金」高騰に対する備えだ。例えば、昨年末から日本海側を中心に襲った厳しい寒さや大雪などの気象災害。西日本地区では綱渡りの電力供給が続いた。電力事業者が電力を売買する卸電力市場の取引価格は1月13日供給分で平時の10倍程度に跳ね上がったという。
地球温暖化に伴う気候変動によって、気象災害による電力需給はタイトになったり、停電に見舞われる可能性も高まっている。電気料金の値上げというリスクも生活者に迫ってくる。
テスラが100万円を切る家庭用蓄電池
こうした動きに対し、卒FITユーザーは売電よりも太陽光でためた電気を自家消費する方が効率的に電気料金を抑えることができるとして、蓄電池の購入を検討している。
これまで蓄電池の普及を阻む大きな壁は、「価格」にあった。それを突破したのが、テスラが2020年春から販売を開始した家庭用蓄電池「Powerwall」。大容量ながら蓄電池本体を含むシステム全体の価格が税別99万円と、100万円を切る思い切った価格を設定した。
市場はテスラ参入で活気づき、国内主要メーカーは100万円台の新製品を投入し始めた。蓄電池普及の強い追い風になるだろう。