「関係人口」という言葉が最近、注目を集めている。関係人口とは、「観光以上、移住未満」の人々のことで昼間人口、夜間人口に次ぐ〝第三の人口″とも呼ばれいる。
この関係人口はソーシャル&エコ・マガジン「ソトコト」がローカルとソーシャル、エコをテーマに取材するうちに生まれた言葉で、「まちを幸せにしたい」という願いが込められている。
例えば、週末だけ田舎で農産物の販売を手伝う人。手伝ってくれた人には時給はもちろん、お茶やお酒を楽しんでもらう。
地方に定住したい若者とマッチングを
都会での仕事では味わえない週末体験が、定期的にその地域と往来する人=「関係人口」となる。地域を面白くする活動を通し、関係人口は徐々に増えてきているようだ。
奈良県下北村で開催する「むらコトアカデミー」では、村内の廃園となった幼稚園をコワーキングスペースにリノベーションし、村長と都会の若者が食事をしながら村の未来を語っているという。
地方では若者が進学や就職で都会に行くことで、高齢者だけの村になり産業が衰退している。後継者難による地場産業の縮小が起きているのだ。
地方自治体ではJターンやIターンなどでの地方回帰に力を入れ、首都圏などで「ふるさと回帰と移住 /就職・居住支援セミナー」を定期的に開催している。
しかし、こうしたセミナーは掛け声倒れのところもある。地方にあこがれや夢を抱いて働こうと考えても、まだまだ「ヨソ者」に冷たい地方の企業が少なくない。首都圏から故郷に帰ろうとしたが、面接さえ受けられなかったという話も聞く。
国土交通省では関係人口を地域振興の起爆剤として、地方での就職や居住をサポートするシンポジウムを開いている。
そこで、地方自治体の取り組みだ。セミナーもいいが、関係人口を切り口に、地方に住みたい若者と地元企業を結び付ける「仲人役」になるなど、具体的なアイデアをもって動いて欲しい。
関係人口という第3の人口が地域に腰を据えて移住し、やがて地域の住民という「定着人口」となり地元に根付いていく。かつて徳川家康が未開の江戸を切り拓いたような斬新な発想を地方自治体でも期待したい。