業界トレンド

地域店ビジネスと顧客を再定義

地域店の話題をさらっている新刊本がある。「売る気がない!のになぜか自然と売れてしまう繁盛の法則」(櫻木隆志著、Clover出版)だ。一見、逆説的なタイトルだが、売り込み色を出せば出すほどお客は逃げていく現代の生活者の購買心理を見事に突いている。

著者の櫻木隆志氏は南九州デジタルの笑倍繁盛事業部長。笑倍繁盛とは売る人も買う人も笑顔で自然に売れる状態「商倍繁盛」のことで、氏はその実践研究を行っている。

本書は全国600店以上の地域店のヒアリングをベースに書かれたもので、「売る気がないのに自然に売れる」という新たな発想の繁盛の法則を提唱する。

地域店ビジネスが大きく変化

地域店ビジネスの再定義も提唱する。従来の「利益を上げる目的でモノを売り買いすること」から「人や社会の幸せのためにモノを売り買いすること」と説く。商売の目的を「利益」から「幸せ」に変えましょうということだ。

さらに、顧客も従来の「モノやサービスを買ってくれる人」から「モノやサービスで幸せになる人」と再定義する。新しい定義では買ってくれるかどうかではなく、それによって幸せになってくれるかどうかが重要。そして、幸せになってもらうための鍵が売り手と買い手の関係性(絆)になると指摘する。

商売の順番を間違えている

櫻木氏は従来の地域店ビジネスが大きく転換していると述べる。「SNSが普及する一方で、人と人との結びつきが見直されそれが社会生活の大きなキーワードになっている。コロナ禍はその動きを加速した。当然地域店ビジネスも変化しており、ビジネスの軸がこれまでのモノ(売り上げ、利益)からヒト(お客)へと180度転換している。

お客の幸福、喜び、安心・安全、笑顔の追求へと人と人との結びつきを強める方向へとビジネスが切り替わっているのだ。生活者の変化を捉え、そうした取り組みに成功した地域店が、売る気がないのに自然に売れるという新たなビジネスを体現している」。

売り上げの多寡を気にするあまり「商売の順番」を間違えている地域店が少なくないようだ。自分の商売を儲けよう、利益を上げようとする前に、どうしたら自分の店がお客さんに喜んでもらえるかを考え抜くこと、それが商売の出発点だということを両店は改めて教えてくれる。

街の電気店だけでなく、地域密着型の燃料店、工務店、電気工事店などにも広く読んで欲しい一冊である。

八巻 潔

八巻 潔

投稿者の記事一覧

株式会社ブレインズ代表
1979年「電波新聞社」に入社。
1996年家電・IT関連の出版社「リック」に入社。
「技術営業」「IT&家電ビジネス」編集長を経てリック専務取締役。
「ヤマダ電機に負けない 弱者の戦い方」(2008年)「家電製品アドバイザー試験 早期完全マスター」(2001年~2013年)などを出版。
2014年家電業界のジャーナリスト&コンサルタントとして独立。
2016年株式会社ブレインズ設立。

関連記事

  1. 八巻ゼミ、石川県商組で開講
  2. 2025年問題と「階段リフト」
  3. 迫る「総額表示」の義務化
  4. ニトリ、家電市場に本格参入
  5. 今年の花粉飛散量は増加予想、「空清」の提案は早めに
  6. コロナ禍で急伸の意外な商品とは
  7. 前半戦の家電市場「晴」、後半戦は「曇り」
  8. 37年振りの7兆円割れも! 23年の家電市場を大予測!

地域店ドットコム運営元

株式会社ブレインズ

ブレインズのコンサル

地域店 コンサルティング

おすすめ記事

前代未聞の合展&バスツアー

売上目標0円、合展ではなく勉強会に1月29日、全国津々浦々から地域家電店の精鋭80以上の店…

最近の投稿

PAGE TOP