コロナ禍のコジマの売り上げが絶好調というほど順調に業績を伸ばしている。月次の売上推移を見ると、4月104.5%、5月119.5%、6月137.0%、7月118.8%と、業界の伸びを大幅に上回っている。7月の実績はケーズデンキに10ポイント以上も水をあけリードしたほどだ。
一方、コジマの親会社のビックカメラは、4月62.1%、5月71.8%、6月93.3%、7月88.0%と絶不調。新型コロナウイルス感染拡大以降、都市部のサラリーマンやインバウンドの需要が激減するなど、都市型店舗のウィークポイントが顕在化する形になった。
ビックカメラは8月27日、宮嶋宏幸社長が代表権のない副会長に退き、後任に木村一義取締役が昇格する9月1日付けの人事を発表した。社長交代は15年ぶりになる。
宮嶋体制下でのビックは2020年8月期の連結純利益は前期比87%減の18億円と、2期連続の最終減益となる見通し。在任15年という長期になっていたことも、今回のトップ交代に影響したようだ。
木村氏は2012年にビックカメラに入社し、2013年にコジマの会長兼社長に就任した。就任直後からビックカメラと連携しコジマの業績回復に力を注いだ。
ビックとの連携では、コジマは2016年2月までに全国約140店舗うち90店舗以上を「コジマ×ビックカメラ」に転換。他方、不採算店を整理しながら、既存店を再生、2016年8月期はわずかながらも増収に転じ前期比100.1%の2,263億円と回復。それ以降、売り上げを伸ばし続けている。
再生のカギは「大きな地域店」
今回のトップ人事は、「コジマ再生」の手腕を買われてのものだろう。コジマ再生で木村氏が標榜したのが「大きな地域店」である。地方の郊外店舗の多いコジマは、地域店のメーンターゲットであるシニア層に絞ったサービス活動に重点を置くことが売り上げにつながると考えた。
キーワードは「訪問サポート」と「スマホ」。前者はコジマ社員がお客に直接伺い地域のシニアの困りごとを解決する「くらし応援便」。2016年10月、「コジマ×ビックカメラ西友ひばりケ丘店」を皮切りに、現在は1/3以上の店舗で実施している。
後者は主要店舗に設置したスマホやパソコンの「サービス・サポートカウンター」だ。中でも現在、シニア層の必須アイテムとなっているスマホの新規購入、買い替えなどの相談に丁寧に応じ、中古品の買い取りや修理、困りごとなどの対応が、高齢者のファンを広げている。
2019年10月には、65歳以上が加入できる新たなポイントカード「アクティブ65倶楽部」を立ち上げた。通常のポイント(10ポイント)に2ポイントが加わる。こうした取り組みは年金生活がメーンの高齢者に支持されている。
新カードでは「配送無料サービス」も特典に加えた。3,000円以上(税込み)の商品は、指定エリア内の配送が無料になる。運転免許証の返納などで「自宅までの商品の持ち帰りが大変」というシニアの声に応えたものだ。木村氏の年齢は76歳。自らのシニア体験がコジマ再生の大きなカギになっているのかもかもしれない。
木村氏はコジマ再生にあたり、コジマ社員に繰り返し、こう言い続けたという。「コジマの原点に返って、顧客から信用、信頼される店になろう」。ビックカメラではビック社員にどのような言葉を投げかけるのだろうか。