「リーマン、東日本大震災を超える大逆風」――。日本百貨店協会が3月24日に発表した2月の全国百貨店売上高によると、インバウンド(訪日外国人)による免税売上高が前年同月比65.4%減の110億円と大幅に落ち込んだ。
全体の売上高は3,661億円、既存店ベースでは前年同月比12.2%減。3月前半も免税売上高は約8割も落ち込んでいるという。

こうした大逆風の中で、オープンしたのがビックカメラ。2月7日、日本橋三越本店新館にオープンした。主なターゲットは日本橋三越本店の富裕層、世帯年収1,000万円を超えるパワーカップル(共働き夫婦)世帯、訪日外国人(インバウンド)需要だが、その一角が崩れた。
インバウンド需要の大きな落ち込みをカバーするのは、懐がリッチな富裕層だろう。ただ、このへんは抜かりないようだ。既存の家電量販店の売り場と違い「プレミアム感」を前面に打ち出している。その典型的な売り場が、「クオリティタイムゾーン」だ。

木目調の床が美しいスペースにソファとテーブルを用意。ゆったりと座りながら家電コンシェルジュからの丁寧な説明を受けられ、店内を歩き回らなくても希望の商品をここに持ってきてもらえる。まさに、高級ホテルのラウンジにいるような優越気分に浸れる。
品揃えもプレミアムだ。通常のビックでは扱っていないアイテムを数多く集めているのがポイントだ。
例えば、約580万円の超高級デジタルカメラ、約360万円の8K対応88型有機ELテレビ、約220万円の8K/4Kチューナー内蔵85型液晶テレビなどのハイエンド家電。
外商部隊との緊密な連携がカギ

家電量販店では初の展示となるフランスの超高級オーディオブランド「Dvialet(デビアレ)」も機器の展示だけでなく視聴ブースも開設。美容家電では、高級美顔器メーカー「ARTISTIC&CO」ブランドのモデル、パナソニックやヤーマンの「百貨店限定モデル」を集めた。
生活家電は海外メーカーが幅を利かしている。LG電子の二層ドラム式洗濯乾燥機「LG DUALWash」がひと際目立つ。洗濯容量最大13kg、2つのドラムで衣類を同時に洗ったり分けても洗える。家庭用としては最大クラスの容量だ。
リッチ層向けの手厚い家電のサポートメニュー「ビックカメラ スーパーサポート プレミアム」も注目ポイント。4つのサポートメニューを揃えた。
中でも、「プレミアムホームトータルサポート」は、スマートフォン、パソコン・タブレットにデジタルカメラ、家電までのトータルサポート行う。10種のメニューを揃えた(店頭、訪問ともに月額1万4,800円)。三越本店の外商部隊との緊密な連携がサポートサービス事業の成否のカギを握りそうだ。
店内を覗くと、中高年サラリーマンや若い女性客の姿もあった。話を聞いてみると、地元日本橋エリアの法人客だ。パソコンの周辺機器や消耗品などの品ぞろえも充実しており、インバウンド需要の落ち込みをカバーする意外な伏兵になるかもしれない。