縮小する家電市場。それを露わにしたのが2018年10月、業界最大手のヤマダ電機が発表した通期の連結業績予想の下方修正かもしれない。
当時の模様を振り返ってみよう。営業利益は前回予想から約59%減の294億円にとどまる見通しだと発表した。下方修正の背景には、リフォームや住宅、家電住まいる館といった新業態創出の生みの苦しみ、猛暑でエアコン販売が好調な中、在庫を圧縮した影響などがあったようだ。
ちなみに、マスコミや金融筋にはヤマダ固有の原因とする見方が目立つ。しかし、筆者は、先に指摘した2020年問題に通じる業界全体の問題が背景にあると見る。
ネット販売の拡大に伴う消費者の購買行動の変化などを背景に、個々の店舗の収益性が低下していることは以前も指摘した。これに対し、量販企業は家電以外の新規ビジネスの開発や売り場縮小によるオペレーティングコストの削減に躍起になっている。
売り場を縮小して新商材を導入したり、テナントを誘致したりしても、売り場効率は決して改善するわけではない。
テナントの場合、賃料が問題になる。家電量販企業は広い売り場を持ち、集客力にも自信を持っている。
立地にもよるが郊外店では3~5万円の坪単価を期待する。売り場を縮小して必要人員を抑えると同時に地代家賃の負担をテナント賃料で軽減する狙いだが、家電量販店はもともと来店頻度が少ない業態。日々の集客を自力で獲得できるようなテナントはそうそうない。
例えば坪3万円で50坪借りれば月の賃料は150万円。粗利率30%としても人件費や光熱費等を含むと1億円近い年商が必要になる。いっそのこと、集客力のあるテナントを安い賃料で誘致し、コラボを図るほうが現実的と言えるだろう。
ヤマダが選んだ新規商材開発も容易な道ではない。専門店として発展してきた家電量販店は、非家電商材を扱ってもなかなか一般に認知されない。
何か生活雑貨を買う必要があるとき、ホームセンターやニトリ、無印良品などを頭に浮かべる人が多いだろうが、目的買いだけではなく、何か面白そうなものが他にもありそうという期待感もある。
楽しい「娯楽」としての買い物ができるかが重要な選択基準となっているのだ。現状、ヤマダの家電スマイル館もまだまだ認知には時間が必要だろう。時間をかけてもGMSの生活雑貨売り場のように、「娯楽」たりえない、魅力に乏しい売り場に陥る可能性もある。
とはいえ、ヤマダは2020年問題に対処すべく必死にチャレンジしている。ヤマダの不振を他人事のように喜んでいる競合各社も、業界シェアが低いので2020年問題の影響が小さい、さらにはチャレンジしていない中で業績が残せているにすぎないだろう。
ネット通販の拡大、購買行動の変化、地方の少子高齢化――2020年問題にどう対応するのか、問われていることを決して忘れてはならないだろう。