5月12日、デジタル改革関連法が可決、成立した。政府は9月1日発足の「デジタル庁」の準備を急ぐ。総務省の試算によると、デジタル機器の操作などで支援を必要とする高齢者は約1,000万人。暮らしの中でのオンライン化が一気に進んでいるが、ITを使いこなせない高齢者の置き去りが懸念されている。
高齢者のデジタルデバイド解消に導く方法はないものか。国の、今でいうDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導いたモデルケースがある。主役は全国の地域電器専門店。舞台は2011年7月の地上デジタル放送への完全移行である。
官民の取り組みが成功
国は2001年の時点でアナログ放送の停波を10年後と定め、エコポイントなどさまざまな施策を導入して国民にテレビの買い替えを促し、全国各地に設けた相談窓口が高齢者らの手助けに奔走した。
その時、高齢者への地デジの啓蒙・普及、相談窓口として大きな役割を果たしたのが全国電機商業組合連合会(全電商連)である。総務省から地デジ化に向けた「戸別訪問事業」の委託を受け、全国2万2,000店の組合店(当時)の多くが参加した。
高齢世帯を中心とした全国の戸別訪問目標は80万件。2011年2月中旬で早くも目標の80万件を突破した。官民あげての取り組みが功を奏したというわけだ。
国は来年度からスマホやタブレット端末を使った行政手続きの講習会を全国約1,000カ所で開催し、国民のデジタルデバイド解消を目指すとしている。
ただ、行政がすべて抱えると膨大な費用がかかる。高齢者のデジタルデバイド解消も地デジ放送の完全移行と同様、国が基本的な方針とロードマップを示し、高齢者を熟知する地域店と助け合いながら実施すべきだろう。