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ピンチは自分をじっくり見直す機会だと決めよう

<苦しみの上塗り>
このコロナ禍で、朝から寝るまで、テレビもラジオもネットもその話題。家電はもちろん、飲食店等、毎日の売り上げでしのいできた個人経営者がこうしている間にも、どれだけ事業閉鎖や撤退を強いられているかと思うと、私も、実は個人商店のようなものだから、真綿で徐々に、いや、もう一気に首を絞められている辛さを感じる。まるでモンゴル襲来(鎌倉時代)に九州が圧倒されたときに吹いた神風のような何かがが吹いてほしい、とも思うしかない気持ちがよくわかる。地域店のみなさまには、こんなに真面目に、コツコツ頑張ってきて、ずっと量販店にさんざん苦しめられ、メーカーの補助も蜘蛛の糸のようにはかなくなる時代になった。せめてオリンピックで多少大型テレビが売れて、それをきっかけに地域のお客様にあれこれ提案できるかか、と期待したらすべてが逆目でシャットアウト。もういかん、と思う経営者は多いと感じる。

<メーカの支援はどこに行ったのか>
そもそもオリンピックの正式スポンサーになって、あらゆる宣伝媒体やイベントなどを駆使して一気に、業界そのものを活性化したいと考えていた由緒あるメーカーさんのトップから末端の社員さんまで、こんなことになるとは、つゆほども思わなかったはずだ。
広告業界は有名どころから下請け的立場にある会社まで、オリンピックどころか、クライアント企業自体が存亡の危機を迎えてしまったので、予定していた仕事が極論、ほぼキャンセル。私の同期でも、努力を重ねてきた優良黒字会社の社長が大借金王に逆戻りである。しかし、存続や雇用だけはなんとかせねば、と血を流しながらも他の道へ転身する余裕すらない。

<地方公務員も同じ>
私の弟夫妻は地方公務員なのでさぞラクだろうと思いきや、久々に弟に会ったらげっそり痩せている。たとえば道路の改善や学校給食の予定など、ひとつひとつの公共事業が全部見直し。給食など、万が一なにかあったら大責任ものである。執行責任者たちは、頻繁に開かれる議会からの決定を待つのだが、国の予算そのものが、なかなか具体的に降りてこない、具体策がないから勝手に動けない。東京都のような「独立国家的な巨大自治体」はともかく、地方自治体の財政にも限度がある。
一方生活者や地元の企業トップなどがいらいらして「お前たちは税金で食っているのに、何をやっているんだ」「無くなった仕事を補償せよ」と、朝から晩までクレームや懇願の嵐。弟などはストレスで免疫が下がって、ついに病気になってしまったが、責任感が強いゆえ、我慢して出勤している。

<自分の道は自分で拓く①>
アメリカの啓蒙セミナーの言葉のようで恐縮だが、個人、数人レベルの会社経営者は、苦しいだろうが、「ピンチをチャンス」に転換するには「自分自身をスキャンして点検」する時間が必要だと思う。
なにより、自分の判断力がたいへん鈍る、その原因のナンバーワンは、誰に聞いても「お金」。だからこそ、何が優先順位か、紙に書いてでも、慌てず考えていただきたい。
家賃、リース、ローン、金融機関からの借り入れ、仕入れの支払い、給料、そしてご自身や家庭の生活費などなど。
しかし、こういう時代だ。よほど強烈な取り立てをする会社や人は「悪人」だ。まずぜったいに「ええかっこ」はしないこと。やみくもに借金をしないこと。まず、家賃や過剰な仕入れは、率直に「払えない」「難しい」と明言する。本心から状況を説明して、相手にも考えてもらう余地を作る。何度催促されても丁寧にお願いする。それだけでも、数か月分の資金流出が防げる。だいたい、世界の政府が「そうしていい」と堂々と言ってくれている。そのうえで、金融機関や税務署などに率直相談すると、私もそうだが案外丁寧に打開策の相談に乗ってもらえる。これが倒産等の危機を防ぐ第一段階だ。まずは腹をくくることである。

<自分の道は自分で拓く②>
まずそこが防衛できたら、社員解雇、減俸の前に、ぜったいやるべきこと。それは「自分の強さは何か」の点検だ。石にかじりついてでも継続の方策を冷静になって練る。自分が破綻したら、社員、アルバイトさんどころか、可能性自体がすべてシャッドダウンされてしまう。仕事仲間や知り合いとの「傷のなめあい」のような「仕方ないね」という会話はやむないにしても、無策はいけない。恥ずかしくとも、ためらわれても「よし、家庭や企業を訪問してお客様がどうなっているのか、聞いてみよう」という、基本点に立ち返る。「社員にやらせよう」では遅い。ご自身が、まず暗中模索状態であっても、「利益は誰からいただくか」「そのために自分は何ができるか」「何をしたいのか」をじっくり考え、速く行動してほしい。商売は、何年も精進してやっと世間から認められる。地域店さんなら直感でわかると思う。この災禍は政府のせいにはできない。お金をいただくのは「お客様から」という原点に戻ろう。そして、自分自身がその前進すら捨ててしまったら、すべてがジ・エンド、になる。
愚痴も出ようが、テレワークでも収入が保証される大メーカーの高給社員でも、高級公務員でもない。

<独立自尊の心で生きる>

さて、福沢諭吉は、田舎の下級武士の出、それも一介の青年だったが「独立自尊」を生涯唱え続けた。自分を助けるには、まず自分を奮い立たせて、自分を尊敬して、自分にしかできない、自立できる道を歩む。崖っぷちの厳しい道を乗り切ってこそ、平時は楽にも歩むことができる。
苦しいのはみなさんだけではない、こうして文章を書いている私も、自分自身にそう言い聞かせている。自分を信じて前進しよう。

杉本 哲也

杉本 哲也

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医学書、語学書出版社にてダイレクトマーケティング責任者を経て、博報堂にてクリエイティブディレクター、新規事業プロデューサー。
現在、新規事業開発&既存事業復活プロジェクトのコンサルタント。

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