厳しくなる一方の地方経済。その象徴的なエリアが北海道だ。その北海道で、セブンイレブン、ローソンなどコンビニ大手に一歩も引かず孤塁を守っているのが、道内最大のコンビニチェーン「セイコーマート」を擁するセコマである。コンビニ王者を寄せ付けない圧倒的なエリアカバー力を誇っている。
大切なのは売り上げ規模ではない
同社が重視している経営指標は売り上げや粗利益、営業利益、最終利益でもない。販売数量、販売単価、日配品比率の3点だ。
セコマのグループ売上高は2,000億円。これを年間の販売数量(9億個)で割ると、1個当たりの販売単価が出る。222円だ。
同社社長の丸谷智保氏はこう話す。「我々の事業は売り上げの2,000億円が大切なのではない。1個222円の商品を年間9億個買ってくれるお客が大切なのだ。そのうち日配品比率は40%。毎日のようにサンドウイッチやおにぎり、納豆や豆腐、惣菜などを買いに来てくれるお客に支えられている」。
セコマは北海道内の延べ客数(2億4,000万人)も重視している。2億4,000万人を540万人(道民の人口)で割ると、道民1人当たり年間44回、セコマで買い物をしている計算になる。
「北海道という限られたエリアで成長するには、マーケットを深堀りしていくことが大切。地域の中で固定客を増やし何回でも買ってもらう戦略だ」。
年間970回。セコマで最も来店頻度の高いお客の買い物回数だ。1日数回、同店を訪れていることになる。「このお客を失うと970人のお客を失う。失わないためにも、お客ののぞむ商品を決して切らしてはいけない」(丸谷氏)。
こうしたサービスをお客のために徹底して追求する。お客から何度も何度も商品を購入してもらう仕組みを作れたたからこそ、コンビニ大手に負けない強い経営を育てた。
コンビニ経営を成り立たせるためには、半径2~3㎞の商圏に3,000人規模の人口が必要といわれる。だが、セコマは人口1,000人の商圏でも出店している。人口減少エリアでも、何度も足を運んでもらえる品揃えを実現できたからこそだろう。
セコマは地元北海道ではなくてはならない道民のインフラに育っている。2019年6月、日本生産性本部サービス産業生産性協議会は顧客満足度調査の最新版を発表した。コンビニエンスストア部門では、王者セブンを抑え4年連続でセコマがトップに立った。