施設ケアから住宅ケアへ
日本は急速に超高齢社会へとひた走っている。2019年の内閣府「高齢社会白書」によると、我が国の総人口は1億2,644万人、65歳以上人口は3,558万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は28.1%となった(2018年10月1日現在)。今後も高齢化率は上昇を続ける。2036年には総人口の3人に1人が高齢者となるという。
こうした高齢者を支えるために導入されたのが、2000年にスタートした「介護保険制度」だ。発足時は3.6兆円であった介護給付費は、2015年には10.1兆円、2025年には約20兆円規模になると予想されている。
大きく膨らむ最大の要因は、団塊の世代全てが75歳以上の「後期高齢者」に突入するからだ。後期高齢者の医療費が増え、介護給付費が急増する。
そうした中で、国は膨大に膨らむ介護給付費を抑制しようと、「施設ケアから住宅ケア」へと大きく舵を切り始めている。
全国の自治体では団塊の世代が75歳以上となる2025年をメドに、「重度な要介護」状態となっても住み慣れた地域でケアする「地域包括ケアシステム」へ重点を移行する。
そのポイントは「住まい」、「医療」、「生活支援」、「介護予防」の4つ。中でも、中小・零細規模の事業者に注目されているのは介護予防だ。イニシャル、ランニングコストともにそれほど掛からず取り組みやすいからだ。
介護リフォーム市場の新たな切り口に
ここに地域店ならではのビジネスチャンスがある。近年、介護予防という観点からスポットを浴びているのが「手すり」だ。住宅介護の必須用具として需要を伸ばしている。
建築金物・資材の専門商社「マツ六」(大阪市天王寺区)では、2000年にスタートした介護保険制度をきっかけに、玄関や廊下、リビング、トイレ、階段、浴室、寝室など多種多様の手すりを開発。
手すりを柱とした介護機器の通販ビジネスは、スタート当初から現在まで増収増益を続けている。最近では介護リフォームを手掛ける電器店やリフォーム店からの受注が急増しているという。
高齢者の手すりの必要性を訴えながら家の中の危険な場所を発見する。いわば「転ばぬ先の手すり」提案は効果的だ。手すりは1本数千円から数万円程度。家の中に簡単にあがれる電器店にとって介護リフォームを手軽に提案できる
調査会社の富士経済では「介護福祉・介護予防関連製品・サービス市場」の将来を予測しており、2020年の介護用電動ベッドや車いす、シルバーカーや手すりなどを含めた介護福祉・介護予防関連製品市場は2013年比で130.6%の6,951億円になると試算している。
リフォームの市場規模は約7兆円。それを獲得するきっかけの一つが手すりやバリアフリーなどといったプチ介護リフォーム提案だ。
自治体によっては、保険対象外の工事や要介護認定を受けていない人にも助成制度を設けているところがある。2025年問題は介護リフォームを活性化する大きな要素になることは間違いないだろう。