売上目標0円、合展ではなく勉強会に
1月29日、全国津々浦々から地域家電店の精鋭80以上の店が東京・銀座の「東京都中小企業会館」に集合した。
単にモノを売るため、売り上げを上げるためのセミナーではなく、「売る人も買う人も、お互いの幸せを目指す地域家電店向けの経営セミナー「商倍繁盛サミット2020」である。鹿児島県鹿児島市中山町の「南九州デジタル」が主催した。
同セミナーのパネルディスカッションで注目を集めたのは、「3.0時代の情報発信&イベント」をテーマにした沼澤栄一氏(東京都江東区・栄電気社長)のトークである。
3.0時代というのは、マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーを中心に提唱されたソーシャルメディア時代のマーケティングの考え方。
これまでの「企業がいかに消費者に製品を売るか」というマーケティングから、3.0では生活者を軸にマーケティング活動を根本から見直す。
初めに「商品」ありき、目的は「売り上げ、利益」という発想から、初めに「人ありき」、その目的は「顧客の幸福、喜び、安心・安全、笑顔」という発想に切り替えることである。
沼澤氏も顧客視点で、従来の系列販社のイベント「合展」の目的を見直した。どのようなマーケティング3.0の合展を仕掛けたのか、沼澤氏に聞いた。
・バス旅行とセットになった系列販社主催の合展に参加したのは今回が7回目。合展の売り上げを条件にバス旅行の経費を補填してくれるイベントだが、商品の売り色が強いのが嫌だった。今回はバス旅行の補填は要らない代わりに、売り上げ目標ゼロ円、合展ではなくスマホや最新家電の勉強会を開いて欲しいと販社に掛け合った。
・難しい要求かなと思ったけど、僕の気持ちを理解してくれた。イベントでは、スマホの使い方、最新の液晶テレビや冷蔵庫、洗濯乾燥機などを説明していただいた。
・お客さんは喜びました。シニアの皆さんはスマホや生活家電には興味はある。でも、詳しく丁寧に教えてもらえるところがない。メーカーさんに何度も質問する人もいて、勉強会は盛り上がりました。
・こちらもお客様と一緒に、丸一日過ごすことによってお客様とのつながりがより一層深まったと思っています。その証拠に、バスツアー終了後、たくさんの「楽しかった、ありがとう」という言葉が寄せられました。
言葉だけでなく、エアコンやテレビ、冷蔵庫、調理家電などの注文も。結局、従来の合展レベルの売り上げはあがっており、売りは後からついてくるということを改めて実感しました。
笑倍繁盛セミナーを主催した南九州デジタル 笑倍繁盛事業部の櫻木隆志氏はこう話す。
「社会の流れは人と人の結びつきが重要なキーワードになっている。地域店の使命も人と人のつながりによって、モノによる幸福感ではなく、心の満足、幸せの価値観を提供していこうという活動にギアチェンジしていく必要がある」。
そうすることによって、お店を見る顧客の目線が変わり、お店に対して好意的・応援モードに変化し、モノは売り込まなくても自然に売れるようになる」。