GfKジャパンによると、2022年の家電市場は前年から2.3%減の7兆円となった。カテゴリー別に見ると、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの生活家電が前年の規模を上回ったが、薄型テレビやBDレコーダーなどのAV機器、携帯電話やパソコンなどのIT機器は低調で前年の規模を下回った。
さて、今年の家電市場はどうなるのか。「人口動態」「生活者の消費マインド」、「大手メーカーの高付加価値戦略の行方」という3のキーワードから予測した。
全ての月で数量ベースが金額ベースを下回る
日本電機工業会(JEMA)によると、22年の白物家電の国内出荷額は前年比2%増の2兆5724億円だった。2年ぶりに増加し、91年に次ぐ高い水準となった。
パナソニックや日立、シャープなど大手メーカーが原材料の上昇を製品価格に転嫁し商品単価が上昇したり、高単価の高付加価値機種に絞り込んだ製品戦略が奏功した。こうしたことから23年の国内家電出荷額は、プラスで推移すると見込まれている。
だが、GfKジャパンの2022年1〜12月の1年間の家電需要のデータでは、全ての月で金額ベースでの前年比が数量ベースを上回っている。
売り上げは客単価×客数で決まるが、客数(数量ベース)が落ち込んでいるところに現在の家電市場の問題点がある。後述するが、この動きは人口動態とリユース市場の活況と密接にからむ。
22年の家電市場が2.3%減程度の落ち込みにとどまったのは、家電製品の値上げや、大手家電メーカーの高付加価値製品シフトの動きによって支えられた感が強い。
23年の見通しは
今年の家電市場を展望すると、消費者心理の変化が重要なポイントになるだろう。相次ぐ食品や電気料金などの生活コストの上昇で消費者の生活防衛意識がここに来て一段と強まっているからだ。記録的な物価高騰は消費者心理に大きな影響を与える。もちろん、家電業界も例外ではない。
メーカー指定価格商品を担ぐのは「諸刃の剣」
23年の家電市場もメーカー各社のコスト転嫁による平均単価の上昇が進んでいくと予想される。一方、足元ではコロナ禍で縮小していたレジャーや外食の需要が回復し始めている。家計の可処分所得が限られるなか、今年は大手家電メーカーの高付加価値製品がその価格に値する価値を訴求できるかどうかがシビアに問われそうだ。
ちなみに、パナソニックは家電販売店に対し、指定した価格で商品「メーカー指定価格商品」を販売する取り組みを進めている。21年度は「指定価格商品」での取引が販売金額ベースで家電販売の8%を占めた。将来的には3割程度まで増やす計画だという。
パナソニックの高付加価値戦略が成功するかどうかは未知数だ。パナソニックの「指定価格商品」を狙って対抗機種を打ち出すメーカーが出てくるだろうし、家電量販企業にとって粗利益が低いとされる指定価格商品を担ぐのは諸刃の剣となる。
他社との差別化が図られ商品力があるうちはいいが、コモディティ化すると値崩れする懸念もぬぐえない。この取り組みが継続できるかどうかは「商品力」次第ということになるだろう。
23年の家電市場は6.9兆円の予想
23年の家電市場を予測する上で欠かせないのが「人口動態」だ。総務省の「住民基本台帳に基づく全国の人口」(2022年1月1日現在)によると、全国の人口は1億2,592万人(日本人1億2,322万人、外国人270万人)となった。
前年に比べ約62万人減少し、2009年をピークに13年連続で減少した。鹿児島市(58万9289人、23年1月現在)レベルの中核都市の人口が毎年消失していることになる。家電市場に与えるインパクトも大きい。
人口減少に加え、国内では単独世帯も急増している。新モデルの開発コンセプトや生産数量、モデルチェンジの時期や回数、機器を小さくするダウンサイジング化など、従来の家電製品のモノづくりやマーケティングを抜本的に見直さざるを得なくなるだろう。
そもそも数量ベースでの家電需要は伸びていない。人口減少はメーカー、販売店にとっても厳しい局面になるはずだ。一方で家電を買い取り再生して中古品として販売する「リユース市場」や、既存メーカー品に比べ2~3割安い「PB(プライベートブランド)市場」は今後益々広がる可能性がある。
23年の家電市場は「人口動態」「生活者の消費マインド」「大手メーカーの高付加価値戦略の行方」という切り口から考慮すれば、実に37年振りに7兆円を割り込み6.9兆円という規模になりそうだ。