地方商圏では少子高齢化や人口減少の動きが顕著に現れている。人口が減れば当然その地域の需要は低下し、需要が低下すれば店舗数も減少する。店舗数が減少すれば「買い物難民」が増加し、生活はますます不便になる。まさに負のスパイラルだ。
とはいえ、地方の高齢者は住み慣れた土地を離れたがらない。生活に必要な商品やサービスをどのように提供するか。地方自治体や物流業者、コンビニエンスストアなどにとって大きな課題となっている。
小型店の強みを整理する
交通インフラとしての自動運転や移動車販売、ドローンでの商品配送などさまざまな試みが現在行われている。では、家電業界の「2020年問題」が本格化する今年以降の家電市場において、地方の小型店は何ができるのか。その強みを整理してみよう。
大型店を構えるGMSや家電量販店に対し小型店は地代家賃がかからず、店舗の運営コストが非常に軽い。土地や建物が自己所有ならなおさらだ。その身軽さは機動力を発揮する強みとなる。
家電量販の成長期は品揃えの豊富さ、価格の安さが消費者の店選びの尺度となっていた。しかし、ネット販売が普及した現在、大型店の品揃えやその品揃えを支える広い売り場は逆にコスト高となっている。
さらに、大手家電メーカーでは生産台数を抑制しており、人気商品は店頭で持ち帰れるとは限らなくなった。ネットで当たり前に買える安いデジタルガジェットやベンチャー系商品の購入、家電以外のジャンルとの同時購入なども大型店では対応できていない。
つまり、現状では大型店が絶対的な優位性を発揮できているわけではないのである。家電に限らず食料品や生活雑貨などの分野でも大手メーカー商品では満足できず、レアな商品を探す買い物客は増えている。
生産量の少ない商品や希少な商品は「すぐ持ち帰れる(届く)」ことが購入の絶対条件ではなく、多少時間がかかってでも商品を手配してくれることが重要になっている。
だが、大型店は「持ち帰り」を重視しており在庫負担を軽視できない。効率よく在庫を運用するには、逆説的だが品揃えを絞り込まないといけない面もある。
ここに小型店のチャンスがある。在庫を最小限にして、幅広い商品をオンデマンドで発注・仕入れできれば、お客の「買い物代行」として地域では不可欠な存在になる。ネット通販が使えない高齢者が多いエリアはなおさらである。
家電業界では早晩、売買差益で稼ぐビジネスは成立しなくなるだろう。個々のお客にとって最適な商品を薦め、生活の不便さを解消する――。そうしたコンサルティング能力に、お客は「対価」を支払うようになる。売買差益はその能力に付随する報酬にすぎない。
厳しい市場環境では変革が起こり、新規ビジネスが台頭するチャンスが生まれる。地方の小型店は生活インフラを支える小型店同士のネットワーク化、各店舗への商品供給を実現するためのパートナーづくりや仕組み作りを早急に構築する必要がある。