3月31日までの工事請負契約
消費税率が昨年10月1日、8%から10%に引き上げられた。GfK ジャパンによると、増税後の昨年10月の家電需要は金額ベースで前年比79.6%と大幅に落ち込んだ。
昨年9月まで好調なペースで推移していたテレビや冷蔵庫、洗濯機など高単価商品の駆け込み需要の反動減は避けられない見通しだ。そこで、注目を集めているのが「次世代住宅ポイント制度」(国土交通省)。
税率10%の新築やリフォームに対して、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度である。リフォームの事業予算は268 億円、交換ポイント商品の主力カテゴリーが家電製品だ。消費増税後のリフォーム市場活性化のカンフル剤になることは間違いないだろう。
2019年8月の新設住宅着工戸数は前年同月比で7.1%減の7万6,034戸と2カ月連続で減少した。消費増税前の駆け込みがみられなかったことには理由がある。増税後の新築住宅向けの住宅ローン減税など、政府がきめ細かな住宅取得支援策を講じたからだ。
それによって、消費増税前後での住宅購入者の負担は実質的にほぼ変わっていない。むしろ、新築住宅商戦は増税前よりも増税後の方が活発になっている。
図 制度全体の流れ
この動きは住宅リフォーム業界も同様だ。増税後のリフォームや新築住宅市場の活性化策として、政府は「次世代住宅ポイント制度」という新たな補助金制度をスタートさせているのも大きな要因だ。
2015年の住宅エコポイントでは一定の省エネ基準を満たした一戸建て住宅やマンションの購入、窓や外壁の断熱改修を対象としたが、今回は広範囲にわたる既存の住宅リフォームが対象となっている。
次世代住宅ポイント制度事務局は昨年6月、工事完了前のポイント発行申請とポイント予約申請の受付を開始した。事業予算は1,300億円。新築が1,032億円、リフォームが268億円である。
ポイント付与の対象となるのは、2019年4月1日から2020年3月31日までに締結された工事請負契約。工事請負契約から2020年3月31日までの間に、工事に着手、2019年10月1 日以降に引渡しを行うものが対象となる。
消費税が10%になった後で住宅を購入すると最大35万円相当、現在住んでいる住宅をリフォームすると最大で30万円相当のポイントがもらえる。
さらに昨年3月、優良ストック住宅推進協議会が主催した「スムストックレポート2019」で石田優国土交通省住宅局長は次のように述べた。「今回の制度では若者や子育て世帯に配慮し、それらの世帯のポイント上限を引き上げた」。
若者世帯とは40歳未満の世帯、子育て世帯とは18歳未満の子供を育てる世帯。いずれもリフォームを行う場合、上限が45万ポイントとなり、既存住宅の購入を伴うリフォームの場合は、上限が60万ポイントに引き上げられる特例を設けた。
▲家電の落ち込みをリフォーム需要でカバーしたい量販店
新ポイント制度は大手の家電量販よりも地域の中小規模店にメリットがある。次世代住宅ポイントに加え、キャッシュレス還元という「二重還元」が可能になるからだ。工事金額の最大5%が消費者に還元されるキャッシュレス決済と併用する「ダブルポイント」還元である。
ダブルポイント還元を軸にリフォーム営業を強化したことで、「昨年後半以降、家電だけでなくリフォームにも強い専門店というアピールもできた」と話すのは東京都内の有力地域家電店だ。
ポイント発行申請は原則として対象住宅の所有者が行うが、工事施工者や分譲事業者が代理で行う代理申請もできる。なお、代理申請を行う場合でもポイントは申請者へ発行される。