トップは「建具・家具の扉の修理」
リフォーム件数のおよそ7割を占めると言われているのが、30万円以下の少リフォームだ。手すりや錠前、雨戸・戸車、水道工事など家のメンテナンスを中心としたリフォームである。
販売店にとって、高額リフォームにつながる突破口となる商材だ。ただ、件数は多いものの金額が小さいのでお客はどこに依頼していいのか分からない。そこで、家電店の出番となる。
少額リフォームとはどのようなものなのか。リフォーム機器を中心とした建築金物・資材の中堅商社「マツ六」(本社、大阪市天王寺区)によると、トップは「建具・家具の扉の修理」、2位は「納戸の張替え」、3位は「サッシ部品の取替え」、4位は「水栓金物の修理」の順となる。
小さな工事ではあるが、お客の信用を得ることができれば家全体の改修やキッチン、リビング、バスなどの高額リフォームにつながる。おろそかにはできない分野だ。
もう一つ、少額リフォームには「介護保険」を利用できる自宅の改修工事がある。いわゆる「介護リフォーム」だ。主な介護リフォーム工事には、「手すりの取付け」、「段差の解消」、「引き戸等への扉の取替え」、「洋式便器等への便器の取替え」などがある。いずれも、少額介護リフォーム工事といえるものだ。
■30万円以下の少額リフォームの工事内訳
その中で、見落とされているのが手すりの取り付けだ。マツ六では「既存住宅6,063万戸のうち30%~40%しか手すりが付けられていないのが現状」と指摘する。高齢者人口が増加する中で、膨大な手すりの潜在需要が眠っているというのだ。
高齢者の手すりの必要性を訴えながら家の中の危険な場所を発見する。いわば「転ばぬ先の手すり」提案は効果的だ。手すりは1本数千円から数万円程度。家の中に簡単にあがれる電器店にとって介護リフォームを手軽に提案できる「ノック商材」になる。
もちろん、少額リフォームのトップ工事「建具・家具の扉の修理」の提案も重要である。古くなったドアクローザーの交換、ドアの錠前交換(握り玉からレバーハンドル)、家具を開け閉めする取手やつまみの交換などである。
握り玉とはドアの取っ手のこと。現在ではレバーハンドルが普及しているが、古い住宅だと今だ「握り玉」というケースが少なくない。
介護保険と住宅改修のセット提案
建具・家具の扉の修理に伴うリフォームでは、錠前交換とともに手すりも提案するのがポイントである。手すりといっても、玄関や廊下、リビング、トイレ、階段、浴室、寝室など多種多様である。介護保険による住宅改修とセットで提案すれば成約に結びつきやすい。
▲手すりの設置をきっかけに介護リフォーム提案を
マツ六ではトイレ、バス、脱衣所などの少額リフォームを確実に獲得できるユニークな提案を行っている。お客の「困りごと」から発想したユニークな提案内容だ。
まず、トイレの「困りごと」で多いのは、水を流す洗浄ハンドルは正常なのに、タンクから便器へと勝手に水が流れてしまうケース。この場合、ロータンク内のボールタップやゴムフロートを交換する。フチがない便器へ交換することでお手入れしやすくなるという提案も効果的だ。
さらに、床や壁紙、巾木(はばき)にキズや汚れがついていれば交換を提案。床にはお手入れがしやすく、柔らかい素材のクッションフロアを打診してみるのも一法だ。
浴室の「困りごと」で多いのは水栓シャワーや鏡の補修だ。カビが発生しているシャワーホースはもちろん、水栓は操作しやすいレバー式タイプへの交換を提案しよう。鏡に黒ズミが発生してないか、風呂ふたにカビが発生していないかも要チェックだ。
タイルの床であれば、防滑性やクッション性を備えた床材に交換する。暖房機を設置すれば床材と合わせてヒートショック対策もできるので効果的な提案となる。暖房機は木体の芯から温まる遠赤外線タイプがお勧めだ。
脱衣所の「困りごと」では水栓や手洗い器、洗濯機まわりの補修が多い。古くなったキャビネットや手洗い器を交換するだけでも脱衣所全体が明るくなる。
洗濯機まわりはお手入れしにくいこともあり、カビや汚れが発生しやすい場所。カビや汚れをチェックし、洗濯機パンや排水トラップの交換を提案する。洗濯物を置く場所として物干しを設置する提案も喜ばれるケースが多い。
こうした少額リフォームの提案は、マツ六によると「高齢者宅であればほぼ100%、住宅で何らかの困りごとを抱えているので非常に効果的」と指摘する。
家電販売は故障などが発生するか、買い替え時期を待たなければならないが、少額リフォームの提案はお客宅にあがるだけで簡単に打診できる。生活家電の需要掘り起こしにもつながるはずだ。