ユーザーは家づくりに満足していない!
ユーザー参加型のリフォームサービスが拡大しつつある。背景にあるのは、ユーザーの満足度の高さ、プロ側の業務効率化だ。今後、業務の一部をユーザーに引き渡す形にシフトしていくことで、リフォームビジネスのカタチ自体が変化していく可能性がある。
大阪の9(ナイン)では、ユーザー自身が完成度合いを選べる未完成住宅という商品展開を本格化した。完成度合いは50%、90%、99%の3種類から選べ、残りをユーザー自身が仕上げるという仕組み。つまり、デザインなどは買い手が自ら描く白い画用紙のような住まいを提供している。
また、デザインから施工までを一貫して行うHandiHouseProjectでは、川崎に住まいを作る行為とスタンスを身につける拠点「Handi Labo」を2018年10月13日にオープンさせた。
同施設は住まいのさまざまな情報をプロと住まい手が交差して、身に着ける場。「自分でメンテナンスしたけどどんな道具をつかえばいいの」「新しい棚を作りたいんだけど手伝ってくれる人いない?」。ここでは、住まいづくりがより日常になるような会話が日常的に行われ、人と人がつながっていく、そんな未来を創ろうとしている。
なぜ、近年こうしたサービスが増えているのか。理由の1つにあるのは、ユーザーが家づくりに満足していないという現実だ。
現在、リフォーム関して言うと全体の約半分が初めての経験であり、知識がない中で事業者探しに突入していく。プロを選んだあとは、当然プロ側の提案からプランを選択、契約、施工という流れが一般的だ。
ただ、提出されたプランが満足できるものかはユーザー自身も気づいてはいない。知識がとぼしい中では、出された選択肢の中でしか、選ぶことができず、よりよいプランの想像ができないからだ。
ところがユーザー参加型のリフォームとなると新しいアイデアが自然と湧き出てくる。自らの体験を通じ、リフォームでできることとできないことの明確化することで、新しいアイデアをユーザー自身で創出できるからだ。
そうして自分らしさを、プランの中に落とし込むことができる。先ほど紹介したユーザー参加型のプロ集団、HandiHouseProjectでは依頼が半年先までうまっており、クレームなどは一切ないという(2018年10月時点)。
戦後、日本では、建築の分業化が進行した。設計や建築士に施工は各種職人に、ユーザーとの窓口や管理は工務店にと、仕事が細分化されていった。戦後の焼け野原で住まいの量の効率的に増やす上では、必要な選択肢だったと想定される。
ただ、細分化を行うことによって確実に情報伝達には支障がでる。ユーザーの本当のニーズを聞き出し、実現するという意味では、非効率になっている可能性もある。
江戸時代のように1人の棟梁が終始ユーザーによりそい、家づくりをするような文化が再び現代版としてよみがえるかもしれない。